初めて犬を飼う人に贈るノンフィクション童話【犬をかうということー2/8】

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ペットショップ
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犬が やってきた

こんなになついているフォルテ、かってもらえるなんて、思ってもいなかったの。

 友達の家で会ったミニチュアダックスフンド、かわいくて、かわいくて、だっこされているすがたも、指でさわると首を動かすすがたも、呼ぶと歩いて近づいてくるすがたも、ねているすがたも。

 かわいい、かわいい、ほしい、ほしーいっ

 家で何回も言ったけれど、ママは、

 「だーめ。」

 「うちは かわないの。」

 「うちは ヤギとコザルとコブタかっているから、もう動物は いらないの。」

なんて言うの。それって パパとか お兄ちゃんとか 私のことなんだよ。だから私は ほっぺをふくらませて言ったの。「ウシもでしょ。」

 通学路の帰り道、白いヨークシャテリアをかっているお家と、その向かい側にビーグルをかっているお家があって、いつもワンちゃん達が おさんぽから帰ってくる時間と私達4年生が帰ってくる時間が いっしょくらいで、会うのが楽しみ。会わない時は、ピンポンおしたこともあるの。

 ある時、そこのお家の人達とママが会った時、

 「おさんぽも だっこも 上手になられて。」

って あいさつされて、ママは目が丸くなっていた。ひみつにしていたから。

 ママは、その小さなヨークシャテリアに赤ちゃんが生まれた時も だっこできなかった。ママは ようち園の時、となりの家の犬に おしりをガブッて かまれて病院に行ってから、犬がこわいんだって。昔は、つながれていない犬や のら犬も けっこういて、どこからか急にあらわれて、走って追いかけてくるから、ずっと こわくて きらいなんだって。

 やっぱり かってもらえないなぁ。パパも お兄ちゃんも どっちかというと、犬苦手だし。

 でも、ショッピングセンターやホームセンターにあるペットショップは、行く度に ガラスごしに見ていた。ガラスをたたいちゃダメだから、ガラスのこっち側で、「気づいて。気づいて。」って念力を送って、目と目が合ったら、指先を こっちのすみ、あっちのすみ、って動かして遊んでいた。やっぱり ほしいなぁ。

 県外から遊びに来た いとこ達と出かけて、ショッピングセンターにある、いつものペットショップへ行った。いとこ達は犬をかっている。ミニチュアシュナウザーという犬だ。

 いとこ達と いっしょだから、初めて、ペットショップでガラスケースから出して、だっこさせてもらった。オスのミニチュアダックスフンド。両手にピッタリのるくらい小さくて、軽くて、だっこされたまま動かない。「ボクをかって。」って 私を見つめている。

 買い物をすませたママにも見てもらった。

 「かわいいね。」

 あれっ、いつもは、「かわいいね。でも かわないよ。見るだけ。」って言うのに、「でも…」って言わない。

 夜、とっても とっても ものすごぉく かわいい犬がいたって話をした。「かわいいから、早くパパも見てみて。」って言ったら、「見るだけだぞ。」って、次の日 見に行った。

 「かわいいな。」

売れちゃう。早くしないと いなくなっちゃう。

「おたんじょう日も お年玉も クリスマスプレゼントも ずっといらないから、かって。」

その日 帰ってから、パパとママに手紙を書いた。

    毎日、世話をします。

    宿題もピアノの練習も 言われなくても します。

    次の日の学校のじゅんびも ちゃあんと します。

    勉強も します。

    お手伝いも します。

 こうやって、うちに犬が やってきた。

  ―「お年玉、約束などは“三か月げんてい”だったね。」って、後でママに言われちゃった。

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