初めて犬を飼う人に贈るノンフィクション童話【犬をかうということー3/8】

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犬をかうことに なるなんて

 犬をかうことになるなんて、思ってもいなかった。でも、ひと目見た時から、頭から はなれない。人の良さそうな、イヤ“犬”の良さそうな、何とも やさしい目と顔をしていた。「ボクをかって。」「おうちに行きたいよう。」って言っているみたいだった。

さわったことないけれど、だいじょうぶかなぁ。でも、さわれる むすめが ちゃんと世話するって言っているし、知り合いで 犬のいるお家、けっこうあるし。

 名前は、むすめと考えた。

 音楽が好きだから、音楽に関係ある名前が いいよね。

 うちは 生き物かっても、長く生きたことが 無かった。

 トンボ、チョウ、カブトムシ、ホタル、キンギョ、セミ、バッタ、カマキリ、ヤドカリ、カメ、カニ、・・・、かわいそうになって、見つけたり つかまえたりしても、すぐ にがすように なっていた。

 強く、たくましく、生きてくれますように、の願いをこめて

 名前は “フォルテ”

 あまり無い名前だし、カッコいい、と みんなの さん成で、決定。

 犬が家に来るまでに、いろいろ用意しないと。

 トイレと ねる場所のサークルは、少し大きめに、男の子だから、白い さくに ブルーが入っている物にした。赤ちゃんが生まれた時みたい。

トイレトレー、ペットシーツ、水飲み器、食器、フード、首輪、リード、スリッカーブラシ・・・。たくさんいるなぁ。ワクチンや きょう犬病の予ぼうせっしゅも しなきゃならないみたい・・・。お金も かかるなぁ。

 必要だと思われる物を全部そろえて、息子の定期テストが終わるのを待って、家族みんなで、ペットショップに むかえに行った。あんまり「かわいい」「かわいい」って言うので、いっしょに住んでいない おじいちゃんおばあちゃんも ペットショップの おむかえを見に来る一大イベントになった。おばあちゃんは名前を覚えられず、「ソルト」なんて よびかけていた。それじゃあ、「塩」だよぉ。

 「あれっ? この犬だっけ?」

 フォルテは生後三か月

 二週間見ない内に ちがった犬かと思うくらい 大きくなっていた。

 「すみません、この犬でしたよね?」

 「そうですよ。」

   たしかに あのやさしい目だ。

 「すみません、鳴き声を一回も聞いていないのですが、この犬『ワン』って言います?っていうか,声 出ます?」

 「ちゃんと 鳴きますよ。」

 「すみません、何か このプツプツした できものみたいな物は?」

 「おっぱいです。」

   え、こんな下の方まで。

 「すみません、何か おなか ポンポンなんですけれど、病気では ないですか?」

 「この子 食いしんぼうで いっぱい食べるんです。」

   ・・・。

 小さな子に 高い高いをするように、両わきを両手で だき上げないで、両わきに かたうでを通すようにして、おしりを もう一方の手で ささえる だき方を 教えてもらった。最後にペットショップのお姉さんに、

 「せまい、このガラスケースの中でしか生きてきていないので、急に広い所に出すと、パニックになります。少しずつならしてあげて下さいね。」

と言われた。

 小さな、上のふたのないダンボールに入れられて、うちにやってきた。

 ダンボールから出して、部屋の中に おろしたら、すぐウンチを一本した。

 おどおどしているので、すぐ ダンボールにもどし、ダンボールのまま サークルに入れた。一時間ほど そのまま 上から話しかけたりしてから、だき上げて ダンボールを取り、サークルの中に放した。

 ダンボールの中では、立って かた手をダンボールの内側の横面に「よっ。」って感じで ついたりして、どうどうとしていたのに、サークルに出すと、急に弱々しく、別の犬みたいになった。

    そりゃそうだよね。今なら わかる。

    急に うちゅう人に連れ去られて、全然ちがう世界に来たようなもんだものね。

 水飲み器の先を指で転がし、ぬれた指をフォルテの口に当ててみる。何回か くり返すと、自分で すぐ飲めるようになった。上手 上手。

 食いしんぼうだけあって、フードは すぐ食べた。アッという間。もっと ゆっくり食べればいいのに。本当に30秒かからないくらいで よう器は 空っぽ。

 子供達二人は はらばいになって、サークルに顔をくっつけて はなれない。サークルの さくの間から あなた達の鼻が フォルテ側に入っちゃってるよ。

 夜、「くぅん、くぅん。」と 鳴いた。「ワン、ワン」ではなく、心細いよう、と言っているみたいだった。むすめがタオルを入れてやると、それにふれながら ねていった。黄色や金色の ししゅうのふちどりや、青色と こん色の色合いや、あつめの手ざわりから、「王様のタオル」といって、むすめが とっても大事にしていたタオルだった。“弟に たから物をあげた お姉ちゃん”みたいだった。

 でも、この夜は、あらしの前の静けさだったのだ。

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