フォルテは弟 フォルテは友達
ママは、フォルテと 私や お兄ちゃんを よく まちがえるようになった。
「フォルテ、○○しなさい。」
私と お兄ちゃんは、知らん顔。だって、私達に言われてないもん。
「あ、まちがえた。」
ってママ。注意の ききめ、弱まり―。
三人兄妹弟みたい。
〈フォルテは やさしい〉
私がママと言い合いになると、私の服のそでをかんできて、私が悪いから、「とにかく はなれろ。」と言うように 引っぱる。
私が元気なく、しょんぼりすわっていると、横にピトッと くっついて、じっとすわっている。
私が泣いていると、なみだを ペロペロッて なめてくる。
〈フォルテは あまえんぼう〉
私と お兄ちゃんが すわっていると、その間に わり込んできたり、ももの上に乗ってきたりする。
私とママが 横になっていると、その間に入ってきて、自分も横になる。でも、なぜだかいつも,私達の顔のところに おしりを向けている。
お兄ちゃんが自分のふとんにフォルテを連れて行くと、どれだけでも いっしょに入って、じっとしている。私達が、同じようにしても、すぐ出ていっちゃうのに。マジック?仲間?
いつもママの足元にいる。すい事をする時も足元に くっついて ねている。ふまれちゃうよ。水が飛んできたりすると、せ中を ドアや かべに くっつけられる場所に動いて、ねる。でも必ず、目を開ければ、ママの姿の見える所。ねているはずなのに、ママが部屋を出て行くと、パッと起きて、ママのいる場所の近くのドアまで いどうする。柱の かげから、目をかた方だけ出して見ている姿は、まるでテレビドラマのようで、『フォルテは見た』って感じ。
〈フォルテは 頭が いい〉
地しんが あった時、フォルテをかかえて テーブルの下に入った。また 地しんが あった時も同じようにした。何年かして、地しんが あった時、フォルテに何も言わないのに、トコトコとテーブルの下に、自分で入っていった。「ここに入るんだよね。」と言っているようだった。
食事の時は、水を水飲み器ではなく、フードの食器のような、小さな うつわに入れて、ピチャピチャたくさん飲めるようにしてある。一度、鼻先も水につっこんで、水に おぼれたみたいになった。そしたら、次から、鼻をうつわの へりの上に のっけて、しただけ 水に入れるようになった。ちょっとブタみたいな顔になる。
フォルテは、見たくない物をかくす。自分のウンチ(いつも そっこう かたづけるんだけど、気づかなかったり、おるす番中に した時)も、きらいなおもちゃも、シートをめくったり、毛布で丸めたり、自分から見えないようにする。
薬を中に入れたチーズの丸いボール、口の中で前歯で小さく食べて、薬だけペッって出す。
景色を見ていて、おばあちゃんちが近づくと わかって、シッポをふって、ほえる。
〈フォルテは こわがり〉
動物病院に行くと、けい帯電話のマナーモードの連続みたいに、ブルブル ブルブルと ふるえ続ける。病院を出ると、ピタッと止まる。
〈フォルテは 面白い〉
フォルテは あたたかい所が好き。ガラスを通して、お日様が当たっている所が あると、カーテンを自分でめくって、そこで ねている。本当の“ホットドック”だ。暑くなりすぎると、動いて出てくる。ネコみたい。
ねながら 鳴くことが ある。でも、下あごが ゆかに ついていて 動かないので、「ウォン―、ウォン―」と 小さな くもったような声になる。足も 空中で走っているように動くことがある。ゆめを見ているんだよね。
自分が おならをしても、知らん顔。でも、音が大きいと、「えっ、なに?なに?」って顔をする。
おトイレ完ぺきにできるようになったフォルテ。ただ、身体が大きくなって、自分では おトイレで ちゃんとしているつもりで、身体は入っているんだけど、おしりが出ているんだよねぇ。そのスタイルを見つけたら、もう一枚トイレシートを持って、フォルテのおしりの下にスライディング!
私の かみの毛の においをかぐと、おなかを上に あお向けになり、身体を左右に、クネックネッ、クネックネッと動かす。ネコにマタタビ、フォルテに私の かみ。
フォルテは ペットフードをなぜか一つぶだけ残すことが多い。見えていないのか、気づかないのかと 最初 思っていた。でも、残っていた時に、お皿を回して、見え方を変えても、食べない。ボクが おなかをこわした時は、これを調べてね、なのか、一つぶ分けてあげるね、なのか、ただの こだわりなのか、分からない。私達は『フォルテの美学』と よぶことにした。
〈フォルテは 人間みたい〉
フォルテは 電話に出たがる。初めのころ、電話で おばあちゃんの「フォ~ル」という声を聞かせたら、返事をするようになった。そのうち、鳴くのではなくて、話しているみたいになってきた。おばあちゃんだけじゃなく、おばさんや、ママのお友達にも ちょっとだけ 出させてもらっているうちに きたえられたのかなぁ。
フォルテは、めったに かまない。でも 何回か かんだことがあった。とつ然、野せいに もどったみたいな しゅん間が ある。そのしゅん間だけ、一回だけ、かもうとする。まだ あまり なれていないパパとの おるす番で、目の前のジャーキーを食べないので、パパが「食べな。」とジャーキーを近くに動かそうとした時、私が、動こうとしないフォルテを動かそうと、何回も おしりから おした時。身体に痛いところがあって、ゲージで じっとしていたフォルテを、ママが病院へ連れて行くのに、だきあげようとした時。ただ、かんだ後、本当に申し訳なさそうな顔をして、片方の目から、涙を流すの。信じてもらえないかもしれないけれど、本当に 目がしらから鼻の横が ぬれるんだよ。人間が反省しているみたい。かまれると、きず口は小さいけれど、深いので、かなり いたいし、バイきんも入って かのうしやすい。私達は、すぐ病院へ行って、はしょう風の注しゃをしてもらい、飲み薬をもらった。これだけ いっしょにいると、フォルテのすごくイヤがることが わかってきたから、もう大じょう夫。
フォルテは 話をよく聞いていて、かなり、言葉が わかる。好きな言葉、きらいな言葉も ある。「ダイエット」「フォルは、おデブねぇ。」と言うと、何ともイヤな顔をするのが おかしい。
弟だったフォルテは、いつの間にか,私達の としを飛びこえ、成犬、そして老犬に なった。